2023-03-17 京懐石を食べた

ランチに京懐石を食べた

全国旅行支援の地域クーポンが残っていたこと、また去年の11月頃に京都を滞在した際に京料理を食べたかったもののスケジュール上食べられなかったというところに少し後悔があったという理由から、お昼に先斗町の京料理のお店「先斗町 ふじ田」にお邪魔させてもらうことにした。

料理としてはコースを頼んでいて、菜の花やたけのこ、鰆といった旬のものや、地元の食材を使ったものが取り入れられており、大変美味しく頂くことができた。仕事の合間に滞在したため飲み物はノンアルコールビールに留めたのだが、欲を言えばお酒を飲みながら楽しみたかった気持ちはある。そこだけはちょっとだけ残念。

先斗町 ふじ田 料理

カウンターと二階席があり、自分はカウンターに案内された。カウンター席には自分の他に二組ほどいたのだが、どちらも常連客のようだった。会話を見るにその方々はこのお店に足繁く通っており、また板前との談笑を楽しんでいた。料理の味はもちろんのこと、そういった空間にお店の良さが感じられて、この店を選んで良かったなと思った。

談笑といえば隣の女性の常連客と板前の会話が面白く、特に「料理に添えられるゆずの皮や三つ葉、わさびといったものを食べるべきか否か」というトピックが興味深いものであった。板前曰く「こういったものは必ず食べてもらうことを意識しておらず、簡単に避けられるように必ず上に添えるようにしている。なので無理に食べる必要は無い。」との事。この上に添えるということにも工夫があり、例えば椀物では汁にその味が移らないように汁に触れないように汁に浮いている具材のその上に添えるようにしているらしい。このような料理の工夫や考え方を板前から直接聞くことは普段ないし、そういった観点でもこのトピックは印象に残るものだった。あと料理のプロだからといって普段からこういった格式の高いものを食べているわけじゃないし、市販の煮込みハンバーグのもとや屋台のたこ焼きもうまいよね、みたいな話もしていてちょっとだけ親近感が湧いた。

また女性の常連客についてのエピソードがもう一つ。その方に先附が提供された際の板前から説明の最中、菜の花を使っているということを受けて「季節だね」という返答をしており、それを聞いた途端これが食を楽しむということなんだ、と大変感銘を受けた。菜の花が旬のものであるということを知っているという引き出し、教養についてはもちろんのことだが、何よりどのような食材を使っているのか、また旬の食材であるという事を意識して食べようとする、というところにその人の感性を見ることができた。

その方は会話を鑑みるに食事は普段は自身で料理したものを食べ、たまに外食で贅沢をするといった、言葉を選ばないのであれば自分と同じような庶民的な生活をしているのだと思う。それでも定期的にこういったお店に訪れていて、また使っている食材も含めて懐石料理を堪能しているというのは、なんとなくこれはとてもいい人生の過ごし方、楽しみ方である気がした。

振り返ってみると自分は食に対してこのような向き合い方はおそらくできていない。例えばクラフトビールとか好きだけど正直あんまり味の違いもわかってない。でも向き合い方を変えたら食はもっと美味しくなるのだとしたらこれはとてももったいないことなのかも。そのような感性を持っているその人がとてもうらやましく、そうなりたいなと思った。